
作品名 : | くじらの親子 |
漫画家 : | くりた陸 |
出版 : | 単行本全10巻 講談社 1996/1~2002/9/1 |
ジャンル: | 家族愛 学園モノ 恋愛 |
トーン : | ほのぼの |
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[あらすじ]
あたしの家にはママはいません。妹を助けようとして事故に遭ってしまい、今はパパと妹の桃とあたし、杏の3人家族です。パパは仕事で忙しいので桃を迎えに行くのはあたしの役目。放課後に友達と遊んだりする時間はありません。ところがある日、クラスで気になっている男子の鮎川君とデュエットをする事に。ただ、放課後に練習するにも妹のお迎えもあり……。あたしだって、好きで早く帰るわけじゃないのに……。
[感想]
母を亡くした小学生のヒロインが、母がいない寂しさ・悲しさを胸に抱えながらも、献身的に保育園児の妹の面倒を見ながら父と親子3人で前向きに生きて行く姿を描いた父子家庭奮闘記+学園恋愛モノ。
前半はヒロイン・杏の健気さ、幼い妹・桃の可愛さ、パパの優しさにじんわりほろりの連続。杏と初恋の鮎川くんとのピュアで甘酸っぱい恋模様にも心が洗われるような気持ちになりましたが、5巻のパパの過去編が個人的にあまりにショッキング(パパのイメージが崩壊)な内容だったのと、終盤にさしかかった9巻での杏の恋に関する雑なルート変更がどうにもしっくりこなくて後半は楽しく読むことができませんでした。
9巻に渡って描かれた小学校時代から中学卒業までの杏と鮎川くんのゆっくり大切に育んできた初恋のあっけない幕切れの後、最終巻では高校時代を飛び抜かして大学時代に再会した当て馬・関川くんの大逆転劇がスピーディに描かれ、最後の2ページで未来の話として、杏が結婚し子供がいることをワンシーンのみで伝えるダイジェスト版のような幕の閉じ方。
まるで打ち切りのような終わり方。杏の結婚相手についてははっきりしていません。中学時代から杏に想いを寄せていた関川くんと杏が大学時代に再会し、二人が交際することになったことは描かれているものの、杏の恋はそこで終わっているからです。
最後のシーンは子供と杏だけのやりとりで、そこから結婚相手を読み取ることはできませんでした。個人的には関川くんと結ばれたと受け取っていますが、断定はできない描かれ方になっています。
パパの過去編(ヒロインの両親の馴れ初め)が個人的にショッキングだったのは、素行の悪さが一線を越えていたから。自分を心配してくれている優しい同級生女子(杏母)を煩わしく思い、彼女の胸に煙草の火を押し付けようとするシーンにドン引き。
怖がらせることが目的で、本当に煙草の火を押し付けるつもりはなかったと言ってましたが、そもそも何も悪くない女の子を姑息な手段で脅そうとすること自体が異常。子煩悩な優しいパパのイメージとギャップがありすぎて、同一人物に思えませんでした。


