作品名 : | 天空の玉座 |
漫画家 : | 青木朋 |
出版 : | 秋田書店 既刊10巻 |
ジャンル: | 歴史モノ 中華風 |
トーン : | シリアス ほのぼの |
試し読み: | 天空の玉座 |
[初出]
漫画雑誌『ミステリーボニータ』2013年3月号より連載中。最新刊第10巻は同誌2018年2月号~6月号掲載。
[感想]
近世中国(明・清)の世界観が取り入れられた架空の中華王朝もの。1~8巻までの感想はこちら。5巻から第二部がスタート。クーデターの失敗から3年が経過。紫禁城では天子の味方勢力が一掃されてしまい、皇太后が相変わらず権力を掌握したまま。
8・9巻では蒙古とのいざこざに巻き込まれたヒロイン(珊瑚)が、アルタンと三度目の再会。珊瑚はアルタンたちと合流したことにより、漢軍が開発している兵器が深刻な公害を起こしていることを知り、アルタンとともに兵器工廠を破壊。
作戦が成功し、すっかり意気投合する珊瑚とアルタン。このまま人質交換せずにモンゴルに来いと珊瑚に言うアルタン。頬を染めながらも、友人を助けるために都に帰らなくちゃいけないと返答する珊瑚。冗談だよと言いつつも、珊瑚への態度に気遣いが感じられるアルタン。
人質交換の直前、別れのあいさつをかわす二人。かける言葉も見つからず、じゃあ、とだけ言って去ろうとする珊瑚の腕を引っ張り、抱き寄せるアルタン。
「すべてがすんだらモンゴルへ来い。これは冗談じゃない。いいな、ウリ坊・・・いや珊瑚」
事実上のプロポーズ!?
顔を真っ赤にした珊瑚はそのまま馬車に乗り込み、子供みたいに無邪気に手を振りながら
「う、うん、またあおうね、アルタン!」
と叫び、耳まで真っ赤にさせる😊
兄・蓬莱は兵器工廠の襲撃事件に乗じて、一族の仇である悪代官の潘総兵官をおびき寄せ、モンゴル人を利用して暗殺に成功。潘総兵官は自らの汚職を隠すために嘘の密告をして姫一族500人を処刑に追い込んだ張本人であることが蓬莱によって明かされる。その後、潘総兵官の暗殺は珊瑚さえも真相を知らされないまま、単にモンゴル人に襲われたものとして処理される。
義賊的活動を再開させた珊瑚は、行方が分からなくなっていた鉄扇と劇的な再会を果たす。孟良、王五、譚嗣堂も無事であることが判明。鉄扇は孟良の一番弟子である一の兄貴(普段は役人)と行動を共にし、王五は孟良とともに山東省に潜伏中、譚は雲南省で王太后を打倒する機会をうかがっているという。
珊瑚は図らずも義士姿で自分よりも身分の高い妃である李貴妃を助けたことで彼女の白馬の王子様的存在となってしまう。我儘っ子の李貴妃は、義士の玉蘭仙子の正体が小バカにしている珊瑚とは知らぬまま、すっかり恋する乙女状態。その後、李貴妃は鉄扇が玉蘭仙子であると勘違いするが、キリっとした美形(性別は女)の鉄扇にすっかり心奪われ、賊との道ならぬ恋に一人酔いしれるのだった😅
皇太后の誕生日をお祝いする慶典の準備で宮中は大忙し。再会した鉄扇から贅沢の限りを尽くした式典を準備するために多くの民が苦しんでいることを知った珊瑚は、鉄扇たちに協力を仰ぎ、式典を台無しに(大仏殿から装飾品などの黄金を盗み、大仏には玉蘭仙子からのメッセージとして王太后を非難する落書きを残す)
私腹を肥やしていた式典の責任者である李(李貴妃父)は今回の大失態で流罪を言い渡される。大仏殿から盗んだ黄金は玉蘭仙子の名によって貧民街や反乱軍に分配され、玉蘭仙子はすっかり民衆の英雄に祭り上げられる。ちなみに李の娘は一番上の貴妃から最下位の答応に格下げされ、珊瑚の隣の住まいに引越しを余儀なくされる。
10巻では長らく行方不明だった譚嗣堂が雲南省で反体制運動を起こし、圧制に苦しめられている民衆を味方につけ、反乱勢力の影響力が次第に増していく様子が描かれるとともに、蓬莱の過去についても明かされることに。
姫一族が粛清された時、まだ子供だった蓬莱は処刑を免れ、宦官にされてしまうが、重罪人の子供として末端の汚物処理係になり、折檻を受ける毎日。いとこの女の子が唯一の支えだったのだが、そんなときに声をかけてくれたのが宦官の王瑶池。
王瑶池は救いの手を差し伸べてくれたわけではなかった。連れていかれたのは先帝の末弟の寝所。性的虐待を受け、涙を流す蓬莱。いとこにも相談できず、屈辱に耐えるしかなかった。
そんなある日、蓬莱はいとこが皇帝と一緒にいるところを見かけて嫉妬に駆られる。いとこに恋心を抱いていた蓬莱は、二人を引き離すために、皇帝が婢女とたわむれていることを王太后に密告する。その結果、いとこは打ち首に。ショックで放心状態になる蓬莱。考えなしだとあざわらう王瑶池。それから蓬莱の心はすっかり壊れてしまったようだ。
現在の話に戻り、玉蘭仙子が皇帝派の反乱勢力とつながっていることを掴んだ皇太后は、宮中に仲間がいるとみて、真っ先に疑いをかけたのは幽閉中の皇帝と知花。二人が尋問されると知り、責任を感じた珊瑚は義士姿で助けに行こうとするが、兄の蓬莱に見破られ、乱暴に引き留められる。
それから間もなくのこと、曲者宦官の王瑶池によって、以前知花を訪ねたときに現場に落としたかんざしを発見され、皇太后に密告される。呼び出しを受けた珊瑚は、玉蘭仙子は珊瑚だという噂があるが本当かと皇太后に問いただされるが・・・(つづく)
相変わらずスリリングな展開ではあるものの、日に日に非現実的な要素が増してきているところが少し引っ掛かるところ。妃である珊瑚がのびのびと後宮と外を行き来できたり、義士としての活躍が超人級になっていたりと、歴史モノというより、もはや完全にファンタジーになってしまっているようなw
それでいて、密会場所にかんざしを落としてしまうドジっ子ぶり。
打倒皇太后に向けて動き出したのは良いのだけど、肝心の天子が全然活躍できていないところもなんだかなぁ。隠し持った知性はどこへやら。取り調べで何か策を弄せるか今後の動きに期待したいところ。それと、アルタンがどう絡んでくるのかも楽しみの一つ。
天空の玉座 9
天空の玉座 10