
個人的には心が痛くなるばかりで、すっきりしない後日談でした。
改心したヒール役に肩入れしてしまう読者にはしんどい内容。
佐渡の地上での生活が始まり、それぞれが協力しあって村落を形成しようとする中、安吾と涼は最初から孤立。犯罪者とは一緒に暮らせないと拒否され、村八分に遭う二人。
最初は受け入れてもらえなくても、安吾たちの優しさを知っているなっちゃんやまつりが仲間を説得し、少しずつ受け入れてもらえるようになるのではと期待していたのですが、残念ながらなっちゃんとまつりだけでは力不足だったようです。
被害者の花が安吾を受け入れられないのは当然のこととして理解できるのですが、安吾たちと未来に行く前からずっと苦楽を共にした同じチームの夏Aメンバーがあまりに冷淡で違和感を覚えました。同じ施設で育てられた彼らだって安吾と同じ思考で殺人や暴挙に加担していたのに、すべての罪を二人に押し付けて自分たちだけ涼しい顔をして仲間とワイワイしている薄情な姿に心が冷え冷え。
サバイバル中の団結によって全員の距離が縮まったかのように思えたのに、定住する段階になると安吾と涼だけが危険人物として排除される集団心理。理不尽なことに、他の夏Aメンバーも同罪なのに世渡り上手なのか彼らはお咎めなし。
まつりとなっちゃん以外で唯一安吾と涼に一定の理解を示した牡丹さんが、夏Aのメンバーたちに安吾たちともう関わらないのかと聞いたときの小瑠璃と源五郎の受け答えがさらに悲しい気持ちにさせられました。ある意味では彼らの方がタチが悪い。安吾のように後悔の念にさいなまれて苦悩することもなく、自分の犯した罪に気づかないまま終わるのだから。
夏Aが出てくる巻を読み返すとやはり他のメンバーも同罪という印象。自分が生き残るために子供(桃太郎)を毒見に使ったり、夏A以外のメンバーを実験台にしたあゆ。夏Aに迷い込んだ桃太郎が木に縛られたり、虐待されているのに、そんなことはどうでもいいと見てみぬふりした小瑠璃。誰も子供を守ってあげなかったのです。唯一鷭だけが止めようとしたものの、気弱で助ける勇気が足りず。今では人徳者のようにふるまい、仲間の信頼を得ている源五郎でさえ小さな桃太郎に冷酷な言葉を投げかけて見捨てたのだから。彼らは桃太郎にちゃんと謝ったのだろうか。この集落では、子供の人権は軽視ですか。
定住段階になり、皆で協力しあって村落を形成する中、安吾と涼だけは村落に近づかないように言い渡されて孤立。そんな現状にかつての仲間は二人のことを気にかけることなく、あっさりと切り捨てることに。こんな後日談では、夏Aのメンバーが根本の部分で全然変わっていなかったことを再確認させられたようで、とても悲しくなりました。
その後の流れも、安吾を守るために涼がわざと暴走という使い古されたパターンでむなしさを覚えました。
結局、居場所がなくなった二人は海外に活路を見出す事に。105人の赤ん坊を解凍させる技術と人員を確保して戻って来ると言い残して。ヨーロッパやアメリカに生き残りがいるようです。
船旅には涼と両想いになったまつりがついていきます。
今生の別れになるかもしれないのに船の近くまで見送ったのはたった7人(なっちゃん、牡丹、蘭、苅田、源五郎、ちまき)。夏Aで見送ったのは源五郎だけ。
外伝の内容は、本編の後半の流れと矛盾している感じがしてモヤモヤしました。
