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2022年8月20日土曜日

いがらしゆみこ『アンはアン』全3巻ネタバレ感想


作品名 : アンはアン
漫画家 : いがらしゆみこ
出版  : 全3巻 講談社
(1985年5月・12月・1986年1月)
ジャンル: 80年代のアメリカ
トーン : シリアス せつない
試し読み: アンはアン

[あらすじ]
アンの両親は別居して、ニューヨークとテキサスに離れ離れ。アンは普段はママのいるニューヨーク、夏休みはパパのいるテキサスですごしていた。何とか二人を仲直りさせたいアンは、色々と知恵をしぼるけど上手くいかない……。 パパもママも大好きなアンの健気な戦いと苦しみ、それを乗り越え大人になっていくまでの心打つ愛情レポート!

[感想]

別居中の両親を仲直りさせようと奮闘する13歳の女の子が主人公。

両親に愛されたい一心で母と暮らすニューヨークでは母好みのボーイッシュな女の子を演じ、父と過ごすテキサスでは父が喜ぶ可憐な女の子を演じるアン。そんな努力もむなしく、離婚調停中の両親はどちらもアンを引き取りたくないと露骨に押し付け合う始末で、アンを何度も傷つけ・・・。 

 両親からの愛情を十分に受けられなかったことで、情緒不安定になったアンが愛着障害的な奇行に走る姿がなんとも不憫で痛々しく、読んでいてしんどくなる展開でしたが、2巻後半からは身勝手な両親のもとを離れた14歳のアンが優しい大人や掛け替えのない仲間と出会って精神的に成長していく姿がいきいきと描かれていて、心がじんわり温かくなりました。 

父が短期間雇った家庭教師のミス・メリーの人間性が素晴らしく、彼女の存在に救われるアン。ミス・メリーが所属する小さな劇団に入ったアンは、舞台女優としての才能を開花させていくとともに、まだ無名ながら才能溢れる若き演出家兼俳優のロリポップに恋をし・・・。 

 ヒロインの恋の相手としてテキサスにいる幼馴染みのジョエル、ニューヨークで何かとアンを可愛がって支えてくれた美貌のボウイ、そして訳ありのロリポップが登場。 

このうち、お淑やかなアンをお嫁さんにしたいと思っていたジョエルは、奇行が目立つようになったアンにたちまち失望して早々に脱落。残り二人との関係・恋の行方は最後まで読めない展開になっています。 

 何があっても変わらぬ愛を貫くボウイと、アンが初めて本当の意味で恋をした相手・ロリポップ。 

少女漫画でおなじみの嫌な当て馬女子も複数登場。ジョエルとの仲に嫉妬して男性3人組にアンを襲わせる(未遂)腹黒テキサス女子・ゾゾ、ロリポップに片想いしてアンを蹴落とそうとする劇団員のブルーベル、寄宿舎学校のいじめっ子たち...。

ほとんどの腹黒女子たちは反省する機会があっても全く改心することなく、嫌な女のままでしたが、ブルーベルだけは例外。アンとのやりとりの中で人間的に成長していく姿が見れてほっこりしました。

クライマックスの演出が特に良かったです。大きな悲劇を乗り越え、万感の思いでピーターパンを演じるアン。「アンはアン」というタイトルに込められたメッセージがしみじみと伝わってきました。


アンはアン 1


アンはアン 2


アンはアン 3







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