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【内容紹介】
月刊少女漫画雑誌『Betsucomi』2004年6月号(「初恋ロケット」)、2004年10月号(「メテオに願いをかけて」)、2005年2月5日号(「バレンタインなんてなくなればいいのにどうしてあるんだろ」)、『デラックスBetsukomi』2004年6月5日号「僕の秘密とその理由」)、2005年4月5日号(「夜汽車紀行」)に掲載。全1巻。
[あらすじ〕
桜(さくら)は月の夢を見る。ロケットに乗って月に行き、誰にもジャマされない王様になる夢を。だから好きな人なんていなくても大丈夫…と思っていたけど、隣の席の荒井(あらい)のことが最近ちょっと気になって…?初恋のキラキラが胸に広がる表題作など、ピュアで不思議な恋物語を集めたタアモの初単行本。
[感想]
表題作の「初恋ロケット」は、ヒロインである、空想好きの夢見がちな女子中学生がまるで赤毛のアンのような愛らしさ。彼女に好意を寄せる隣の席の荒井くんとの、初々しいやりとりが微笑ましかったです。
前半は、優しいお話、後半はちょっぴし、ほろ苦系というラインナップ。
読み切り4作品。
・「夜汽車紀行」
九州が舞台。駅員さんに一目惚れした純な女子中学生のお話。少しファンタジー要素が混じった淡い初恋物語。あどけなさの残る中学生のヒロインを優しく見守る駅員さんが、地味にかっこいいなぁ。心温まるやりとりに癒されました。ヒロインの九州弁がお茶目。
・ 「メテオに願いをかけて」
世紀末、ノストラダムスの予言を信じて小学校に避難したヒロインと彼女に付き添ってくれたおさななじみの5年後を描いたお話。お人好しケンちゃんの優しさが自分だけに向けばいいのに、と切なく胸を疼かせるヒロインがいじらしい。ただ、 その後、お互いに、両想いだと気付く過程が、やや不自然というか、凝りすぎてた印象。もう少し自然に告白しても良かったのでは、と私は思うけれど。
・「バレンタインなんてなくなればいいのにどうしてあるんだろ」
バレンタインに学校をサボった自称モテない男子が、通りで、片想いの相手がチョコを捨てている場面に出くわすお話。かなわぬ恋に疲れて、鬱屈した気持ちが抑えれずに、ついつい自嘲気味な態度をとる女の子と、そんな彼女に片想いする男の子の切なさがリアルに表現されていたと思う。ちょっとほろ苦系。
・「僕の秘密とその理由」
高校教師と卒業を間近に控えた女子高生の恋話。男ってなんで浮気するんだろう、受け持ちの女子高生から言われた一言。この子に気があった先生は、結婚を迫る恋人の存在を持て余していた。「浮気した。しかも、心の浮気・・・。」恋人にそう告げた先生の下した決断とは?先生の逡巡がリアルだったなぁ。最後のヘタレ具合まで。こういう煮えきらない態度の男の人って、いるよねぇ。タアモさんの作風は、どこかメルヘンチックなのに、現実世界から隔絶した感じがなく、リアルな感情描写が魅力。独特の世界観があって、面白かったです。