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2016年4月5日火曜日

和泉かねよし『女王の花』第1巻~13巻

作品名: 女王の花
漫画家: 和泉 かねよし
出版: 単行本既刊13巻
ジャンル: 歴史モノ
トーン: シリアス せつない
試読: 女王の花

[作品紹介]
『ベツコミ』(小学館)2007年11月号に読み切り掲載後、その続編が2008年7月号と2009年7月号に掲載された。2010年6月号より隔月での定期連載となる。第60回(平成26年度)小学館漫画賞少女向け部門を受賞。

[あらすじ]
亜国(あこく)の姫でありながら冷遇されている亜姫(あき)。幼いながらも母の世話をしながら、明るく生きる亜姫はある日、金の髪と天の色の眼を持つ奴隷の少年・薄星(はくせい)と出会う。境遇の違いを超えて、強い絆で結ばれる二人だったが、その先に待っていたのは…!?

[感想]
不遇の姫と幼いころに拾われた奴隷少年との身分差恋や、どん底から這い上がり、女王を目指すという設定に面白味を感じるが、読み進めれば読み進めるほど、バランスの悪さが目立つ。ラストはもう決めてあるという二人の恋の行く末は、悲劇的な結末を暗示するモノローグによって最初からネタ明かしされてしまっているようだし、歴史モノとしては、継室・土妃への復讐のためだけに国を動かそうとするヒロインには、民衆を守る気持ちが薄くて、このままでは大義名分が立たない状況。

13巻にきていよいよクライマックスに近づいているようだが、この物語の核となるテーマとはいったい何だろう。今のところ、ヒロインは口では良い女王になりたいと言いながらも、やってることは単なる復讐の鬼にしか見えないのだが、果たして女王としての器が彼女にあるのかどうか。この物語はすでに亡くなっている古代の女王の人生を描いているようだが、モノローグ通りに行くのならば、この後、非業の死を遂げるのだろう。とはいえ、女王の残した意味深な言葉が気になる。1000年に一度咲き、どんな願いも叶えるという女王の花。それによって、最後に、奇跡が起こるのか・・・。

結局、このヒロインを突き動かしているのは、土妃に復讐したい、ただそれに尽きる。もう少しヒロインの心の変化を描いてもいいんじゃないかなと思ってしまう。かりに仇討ちできても、それまでに大切な人が次々に死んでいき、彼女のもとには結局、何が残るのだろう。

むしろ、復讐に囚われていた彼女がいろんな経験を通じて、次第に真の女王として目覚めていくところをもっと打ち出してみるとか。あるいは恋をとってもいい。今のヒロインには、悲壮感しかない。心の底から女王になりたいという気概が感じられない。復讐のために女王になるというだけ。こんなふうに憎しみにとらわれた危うい人物に国を動かされたら、民はたまったもんじゃない。ヒロインにはもっと視野を広げて、変わっていってほしいのだが、それができないというなら、やっぱりこの物語は悲劇に終わるのだろう。

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