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[初出]
『ARIA』2011年6月号~2013年7月号掲載。
[あらすじ]
酒飲みの父、貧しい家。不幸を仕方ないとあきらめ過ごす高校生の敦子(あつこ)は、ある日、 大金持ちの男子、至(いたる)・遼(りょう)・信也(しんや)と出会ったことで運命が反転。瓜二つの、乃木(のぎ)グループの跡取り息子・至の身代わりに 仕立てられる。「王子」となった敦子が、「宮殿」の中で得たもの、そして失ったものとは――? ――この世で一番不幸なことは、人を好きになること――。”王子”達の切なく美しいラブ・ストーリー。
[感想]
設定だけ見ると、新鮮味はあまり感じられないのですが、登場人物たちそれぞれの背負うものや複雑な感情が交差していくストーリー運びに引きこまれました。家庭に恵まれず、学校でもイジメられて、絶望したくなるような毎日の中、誰を恨むでもなく、忍耐強く生きてきたヒロインが、束の間でも身代わりとして新しい人生を与えられ、人のぬくもりを知っていくという内容が良かったです。
ちょっと気になったのは、ヒロインが身代わりとしてお屋敷に連れて来られてからというもの、ずっと乃木家を中心に話が進んでいくので、もう少しヒロインの元の生活のことや親子関係をフォローしてくれていたら、尚良かったのではないかと。身代わりから始まる、せつないラブストーリーとしては、読みごたえがありました。