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2018年9月23日日曜日

『三国志ジョーカー』全5巻ネタバレ感想【青木朋】

三国志ジョーカー 1
作品名 : 三国志ジョーカー
漫画家 : 青木朋
出版  : 秋田書店 全5巻
ジャンル: 歴史モノ ファンタジー 中華風
トーン : シリアス ほのぼの
試し読み: 三国志ジョーカー

[初出]
月刊『ミステリーボニータ』2010年08月号~2012年9月号掲載作品。

[あらすじ]
赤壁の戦い直前の三国志時代。スーツを着た不思議な青年・司馬懿は因縁の相手・諸葛亮を倒すため、曹操の長子・曹丕の下へと……!?

[感想]

ファンが多い三国志モノだけに大胆にSFを加えたアレンジや独自のキャラ設定をどうみるかで好みは分かれるかと思いますが、全20話と短めでありながら、映画の題材にできそうなスリリング且つドラマチックなストーリーが楽しめる作品。

ネタバレ注意↓

終盤になって明かされる諸葛孔明なりすましの正体。諸葛がなぜ仲達に固執するのか、謎めいた人物像やタイムトラベルの謎が次々に明かされていきます。てっきり、諸葛の正体はもっとあくどい人物かと思っていたので、未来の世界で長寿遺伝子の研究をしているコミュ障でゲイの天才科学者だったというのはかなり意表を突かれましたが、終盤の盛り上げにこの設定がしっかり効果を発揮しているところが良かったです。

未来に居場所のなかった孤高の天才科学者が、初めは野蛮で劣っているとバカにしていた古代人と成り行き上交流を深めざるを得なくなったことで、それまで一度も味わえなかった人の優しさや人情に触れ、次第に人間らしさが芽生えていく様子や、自己を確立していく過程が描かれていて、後半は前半以上に話に深みが増している印象を受けました。

壮大なファンタジーは後半になるにつれて大風呂敷を広げ過ぎて収拾がつかなくなる作品が多い中、この作品は後半が見せ場になっているところが高く評価できます。個人的には仲達が主人公の前半よりも、正体がバレた後の未来人ルカが主人公になっていく終盤の方が一層面白く感じました。

三国志の関係図でいえば、はじめは仲達のいる魏の曹操、なかでも曹丕をはじめとする曹操の息子たちが主人公側で進み、その後は諸葛孔明のいる蜀の劉備側の様子も明らかになっていく構図になっています。

劉備のイメージが横山光輝さんのキャラに慣れている者としては、細身の青年ではなく、どちらかというと関羽みたいな感じだったので、豪放磊落な劉備に最初は少し違和感がありましたが、読み進めるうちに青木朋さんが描く、お人よしすぎない程度に人情も持ち合わせている、頼れるおっさん劉備も味があって良いなと思いました。忠臣趙雲はイメージ通り。

その後、赤壁の戦いで呉の孫権や周瑜たちも出てきますが、呉は魏と蜀に比べるとキャラ的に劣っている感じに描かれており、かの天才軍師・周瑜は視野の狭い陰険な男止まり。

ちなみに、未来人のルカと本物の諸葛亮との間には何のつながりもなく、たまたま古代に行くのに必要な身体を借りる契約をしたのが曹操を倒したいと思いつつも無力な自分を嘆いていた諸葛だったという設定。

ルカは最終的にタイムトラベルの禁を犯した時空法違反で未来のタイムパトロールに逮捕され、元の世界に戻されてしまいますが、このラストシーンに不満を感じる読者が結構いるようですね。私は逆にあれで良かったと思いました。

人間的に成長して元の世界に戻るというのは冒険譚としてはお約束の終わり方だと思いますし、未来人のルカが未来の便利な道具を全て失い、帰る手段も断たれた状態で乱世真っただ中の古代に生きるのは過酷すぎます。『王家の紋章』のようにヒロインが古代人と結婚するなら別ですが。


三国志ジョーカー


三国志ジョーカー 2


三国志ジョーカー 3


三国志ジョーカー 4


三国志ジョーカー 5









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