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2022年9月25日日曜日

菅野文『薔薇王の葬列』第15巻・16巻ネタバレ感想



薔薇王の葬列 15

15巻:66話~69話収録 
16巻:70話~74話収録 

 15巻・16巻はリチャードが愛した人たちが次々に物語から退場。どの別れのシーンも壮絶でリチャードの悲しみと喪失感がひしひしと胸に迫ってきました。15巻・16巻はしばらく読み返せそうにないなぁ。

塔に幽閉されていた前王(幼帝)のエドワード五世と弟は、王冠を狙うリッチモンドがリチャードが暗殺したように見せかけて毒殺。エリザベスの息子たちは悪役キャラでしたが、大人に利用されただけの人生だったんだなぁと。まだあどけなさの残る少年たちの最期は権力争いの残酷さ・非情さを浮き彫りにし、憐憫を誘います。 

 反乱を起こしたバッキンガムの悲しくも美しい最期。このシーンはシリーズ一番の見せ場といっても過言ではないほどドラマチックな演出になっています。単なる反乱や愛の暴走ではなく、命をかけたバッキンガムのリチャードへの献身愛を感じることができました。

そして、追い打ちをかけるように王妃も...。結核を患っていたアンの早すぎる死。アンの最期の願いで二人の息子・エドワードは血まみれの権力争いに巻き込まれないように廃摘され、養子に出されることに。城を去っていくときのエドワードの悲しそうな顔にギュッと胸が締め付けられましたが、両親の願い通り、なんとか生き延びて幸せになってほしいと切に願います。 

 一人また一人と、リチャードの大切な人が亡くなり、そばにいるのはケイツビーだけに。そんな中、ティレルと運命的な再会を果たすリチャード。 

 リチャードの初恋相手・ヘンリー六世(ティレル)がバッキンガムの台頭とともにメンヘラ男に成り下がってしまったように見えるのが常々残念だなと思っていましたが、最後の最後にそんなティレルの見せ場が用意されていたとは、さすがエンターテイナーな菅野さん。 

 周りは敵だらけのリチャード。不気味な存在だった魔女ジェーンがリチャードの味方になってくれたのがせめてもの救い。



薔薇王の葬列 15



薔薇王の葬列 16



2022年9月23日金曜日

くりた陸『くじらの親子』全10巻ネタバレ感想

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作品名 : くじらの親子
漫画家 : くりた陸
出版  : 単行本全10巻
講談社 1996/1~2002/9/1
ジャンル: 家族愛 学園モノ 恋愛
トーン : ほのぼの
試し読み: くじらの親子(広告リンク)

[あらすじ]
あたしの家にはママはいません。妹を助けようとして事故に遭ってしまい、今はパパと妹の桃とあたし、杏の3人家族です。パパは仕事で忙しいので桃を迎えに行くのはあたしの役目。放課後に友達と遊んだりする時間はありません。ところがある日、クラスで気になっている男子の鮎川君とデュエットをする事に。ただ、放課後に練習するにも妹のお迎えもあり……。あたしだって、好きで早く帰るわけじゃないのに……。

[感想]

母を亡くした小学生のヒロインが、母がいない寂しさ・悲しさを胸に抱えながらも、献身的に保育園児の妹の面倒を見ながら父と親子3人で前向きに生きて行く姿を描いた父子家庭奮闘記+学園恋愛モノ。

前半はヒロイン・杏の健気さ、幼い妹・桃の可愛さ、パパの優しさにじんわりほろりの連続。杏と初恋の鮎川くんとのピュアで甘酸っぱい恋模様にも心が洗われるような気持ちになりましたが、5巻のパパの過去編が個人的にあまりにショッキング(パパのイメージが崩壊)な内容だったのと、終盤にさしかかった9巻での杏の恋に関する雑なルート変更がどうにもしっくりこなくて後半は楽しく読むことができませんでした。

9巻に渡って描かれた、小学校時代から中学卒業までの杏と鮎川くんのゆっくり大切に育んできた初恋のあっけない幕切れの後、最終巻では高校時代を飛び抜かして大学時代に再会した当て馬・関川くんの大逆転劇がスピーディに描かれ、最後の2ページで未来の話として、杏が結婚し子供がいることをワンシーンのみで伝えるダイジェスト版のような幕の閉じ方。まるで打ち切りのような終わり方。

杏の結婚相手については、はっきりしていません。中学時代から杏に想いを寄せていた関川くんと杏が大学時代に再会し、二人が交際することになったことは描かれているものの、杏の恋はそこで終わっているからです。最後のシーンは子供と杏だけのやりとりで、そこから結婚相手を読み取ることはできませんでした。個人的には関川くんと結ばれたと受け取っていますが、断定はできない描かれ方になっています。

パパの過去編(ヒロインの両親の馴れ初め)が個人的にショッキングだったのは、素行の悪さが一線を越えていたから。

自分を心配してくれている優しい同級生女子(杏母)を煩わしく思い、彼女の胸に煙草の火を押し付けようとするシーンにドン引き。怖がらせることが目的で、本当に煙草の火を押し付けるつもりはなかったと言ってましたが、そもそも何も悪くない女の子を姑息な手段で脅そうとすること自体が異常。子煩悩な優しいパパのイメージとギャップがありすぎて、同一人物に思えませんでした。

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くじらの親子 10



2022年9月20日火曜日

音久無『執事・黒星は傅かない』第11巻第60話ネタバレ感想


執事・黒星は傅かない 9

ついに最終話までのカウントダウン。残りあと4話。

引き続き修学旅行編。京都で行方不明になった黒星を探す紫のもとに、誘拐犯から怪しげな挑戦状が届き、黒星を救うべくスティーヴンとともに謎解きに挑むことになった紫。

黒星の過去編→前任の柳森執事登場。

狐面の男はフットマンだった黒星を執事に育て上げた柳森だと判明しますが、犯行動機は不明。祖父の意向で動いているのだとしたら、可愛い孫娘の修学旅行中にすることなのかとツッコみたくなります😅

スティーヴンは偶然にしては不自然な登場の仕方ですよね...。おそらく事情を知っていながら、知らないふりしているのかなと。何のために合流したのか気になります。

残り少なくなってきましたが、このまま高校生編で終わってしまうのか、この後一気に進むのか。いずれにせよ、素敵なクライマックスを迎えてほしいです。

【追記】
59話のネタバレ感想を誤って消去してしまいました。60話の感想を作成中に、一つ前の59話の内容を確認していて、うっかりそのままそちらで作成→60話に上書き保存😱


秋乃茉莉『夜の過客~ヴァンパイアは月夜に目覚める~』全2巻ネタバレ感想


作品名 : 夜の過客~ヴァンパイアは月夜に目覚める~
漫画家 : 秋乃茉莉
出版  : 単行本全2巻(学研 2004/6・2005/8)
電子版全2巻(秋水社ORIGINAL 2022/2・6)
ジャンル: ファンタジー 吸血鬼
トーン : シリアス せつない
試し読み: 夜の過客~ヴァンパイアは月夜に目覚める~

[あらすじ]
整った容姿と不思議な雰囲気を纏った記憶喪失の青年・アレックスは、世界を転々と歩き渡り、自分の本当の記憶と故郷を探し求めていた。彼は旅の途中で様々な人と出会うが、中には彼の優しい心と記憶喪失を利用して悪事を企てる者もいた。アレックスは満月の夜、吸血鬼として覚醒し、血を媒介に人々の記憶を喰らう。醜い欲にまみれた人間の闇を暴き、鉄槌を下す――! 自分とは何者か追い求めるアレックスの、長い旅が始まる……。

[感想]

終わりなき放浪の旅を続ける孤独な吸血鬼の物語。

森の中で倒れていたところを親切な医者父娘に保護された記憶喪失の美少年。その美少年の正体が判明する初回はミステリアスな雰囲気と悲恋が織り込まれた幻想的なお話になっていて引き込まれましたが、2話・3話は新たな訪問先で主人公の美少年が同様の吸血鬼騒動を起こして悲劇的結末を迎える(人々の記憶を消して旅立つ)ということの繰り返しだったので少々マンネリ感がありました。 

4話で主人公のアレックス(本当はクリストファー)の生い立ちが明かされますが、旅の途中で気を失って過去編に突入するという演出が現在起きている出来事であるかのように映って紛らわしかったです。

過去編の内容は後半にとっておく必要がなく、早めに明かした方が1話完結の旅話オムニバスを続けるより、ストーリー性が高まって読者を飽きさせない構成になったと思うので、過去編を独立して2話に配置する方が良かったかなと。

恋愛要素はほんの少しだけ。何人かの女性と良い雰囲気になるものの、純愛には程遠く、その場の雰囲気というか、人間側の片想いに近い描かれ方だったので、吸血鬼と人間のせつないラブストーリーを期待すると肩透かし感があります。

命の危機に瀕した兄を助けようとして神頼みした弟の純粋な愛を悪用した吸血鬼によって眷属にされてしまった元人間の哀れな美少年風吸血鬼と、彼に血を吸われて記憶を奪われたり、吸血鬼騒動に巻き込まれる気の毒な人間たちと、一部の悪い人間にとって因果応報な結末が待っている、物悲しい吸血鬼物語。


夜の過客~ヴァンパイアは月夜に目覚める~


夜の過客~ヴァンパイアは月夜に目覚める~ 2



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